《英語の先生 猛特訓》2006.11.02
全国の中学、高校の英語の先生が、得意なはずの英語の特訓に追われている。大学で「日本語厳禁」の授業を受けたり、民間の英会話教室に通ったり。日本人の英会話能力の向上を目指す文部科学省が、まず先生の能力アップの大号令をかけたからだ。小学校での英語必修化が議論されているのをにらみ、小学校の先生の間でも英語研修が始まった。
会話力向上へ大号令:
「Left side!」「You got it!」。目隠しをした先生が、周りの先生たちからはやされながら、紙で作った目や耳を黒板にはり付けていく。お正月遊びの定番「福笑い」だが、指示は英語限定だ。
9月上旬、大阪市内の市教育センター。市立中学や高校の英語教師約120人が集められ、外国人指導助手(ALT)から、英語のゲームを応用した授業を受けた。
大阪市教委が2003年度から始めた「英語科指導力向上講座」の一つ。2007年度までの5年間に約600人が受講。夏休み中には、関西外国語大(大阪府枚方市)で6日間、外国人教授による日本語厳禁の授業で「英語漬け」になる。
きっかけは文科省が2002年に公表した「英語が使える日本人の育成のための戦略構想」。「まずは教師が英語を使えるように」と、各地の教育委員会が資質の向上に取り組みだした。教師の英語力のレベル低下を危ぶむ声も、こうした動きを後押しした。
香川県教委は民間の英会話教室と提携。英検準1級、TOEIC730点、TOEFL550点のいずれかの目標をクリアすれば、14万円を上限に受講料の7割を県教委が負担する。2003〜2005年度の3年間に47人が受講、8割が目標を達成した。
京都市教委は2003〜2005年度、約340人を対象に「3カ年集中研修」を実施した。「英字新聞を読む」「英会話のCDを聞く」などの日課をこなし、10日間の集中研修を受けた後に全員がTOEFLを受験した。
小学校にも動きは広がる。2005年度に文科省から小中一貫英語教育の特区に認定された大阪府枚方市は、今年から小学校の先生の英語研修を始めた。地元の関西外大の学生が市内の5校に年間20回ほど赴き、ゲームや歌を採り入れた指導法を先生に助言。総合学習の時間には一緒に授業を進めている。
業界は商機と受け止める。英会話教室の最大手NOVA(大阪市)は滋賀県など全国約30自治体と提携、小中高の先生向けの研修に外国人講師を派遣している。広報担当者は「英語教育に熱心な自治体の増加は追い風。教室に通う先生も年々増えている」と歓迎する。
ただ、先生の側からは悲鳴もあがる。ある大阪市立の高校の英語教師は「研修では講師の英語がほとんど聞き取れず、正直しんどかった」。部活や生活指導の合間を縫って、英単語を覚え直す日々だ。「英語が苦手な生徒の気持ちも分かる、私みたいな先生がいてもいいのでは」とぼやく。
【英語がつかえる日本人の育成のための戦略構想】
会話ができない日本の英語教育の改革に向け、文部科学省が2002年7月に公表。英語のネイティブスピーカーの活用を広げ、全国で5年間に6万人の英語教員の研修に補助金を交付する。各教育委員会には、英語教員の採用条件や評価項目に英検やTOEICの点数を加えるように求めている。